ALPS STORY
    ALPS MINI STORY PartY
    思いつき構想第6弾

     『 23時50分の旅立ち 』
                                 草野  中 原案
                                 池馬 白栂 著


 あと少しで明日になろうとしているというのに、ネオンの光がめまぐるしく変わっている。
 その反射光に照らされたビルを見ながら駅へ向かう。
「お前は負け犬だ!」……そんな言葉がネオンの街から背中に重くのしかかってくる。
 改札を通ると何故かずっしりと荷物が重くなる。
 別に何ら変わってはない。
 しかし足取りはだんだんと遅くなっていく。
 ホームの階段を一歩一歩登って行く。
 北風が体を通り過ぎて流れる。
 スキーウェアやバックを持った人間があざやかにホームを彩っている。
 しかし俺にはすべてが灰色にしか見えない。
 あれだけ田舎へ大見栄を張って出てきたのだ。
 しかし結局は……何もできなかった。
 夢は夢へと消えたのだ。
 苦労して東京の大学に入り、勉強してきた。
 しかし社会は甘くはなかった。
 希望の会社には受からず、世に言う就職浪人である。
 最悪のパターンだ……
 となれば田舎の民宿を継ぐしかない。
 ゆっくりとホームに列車が入ってくる。
 田舎へと暗くなる道を行く列車である。
 夜行急行……感傷に浸るなら最高のものかもしれない。
 もう戻れない、ここまできたら。
 今までの友人たちとの楽しい思い出も、夢も……すべて切り捨てなくてはいけないのだ。
 ヘッドライトが眩しく光り 「プアァーン」
という音と共に俺の前を通過する。
 列車はゆっくりとその長い車体を止めると「シュー」という音と共に扉を開いた。
 次々と色とりどりのジャケットを着込んだ人たちが吸い込まれて行く。
 そしてすべての人々が乗り終わると、大きく一息ついて車内へ踏み込む。
 と、その直前。
「風見ぃっ!」
という声が通る。
 自分の名前を呼ばれて立ち止まり、声のほうへと振り向く。
 一瞬自分の目を疑う。
 その先には仲のよかった大学時代の仲間が立っていた。
 彼らや彼女たちにはこの列車で帰るなんてことは一言も言っていない。
「お、お前らどうして……?」
 という俺の声に、一人が 「お前はこの列車が好きだっていつも口癖のように言ってたからな」
と俺の方を軽く叩いた。
 「まったく。水臭いじゃない。一言も言わずに行っちゃおうなんて」
 「そうよ、風見君らしくもない。いつものさわやかさはどこへ行っちゃったの?」
 何も反論できない俺に言いたいことをずけずけと言ってくる。
 そして出発直前……仲間は……
「後を継げるなんて素晴らしいじゃないか」
「ほんと。民宿のオーナーなんてそう簡単になれるもんじゃないぜ」
「そうよ。田舎に帰っても今までの頑張りがあれば、すぐにみんなも認めてくれるわよ」
「私たちも安く泊めてもらえるかもしれないしね」
と、いろんな言葉で励ましてくれる。
 俺は下を向いた。そして顔を上げ……
「ありがとう!」
と言って、仲間の手を握り列車に乗り込んだ。
 いつのまにか鳴っていた出発のメロディも鳴り止んだ。
「6番線より南小谷行き、急行アルプス号が発車いたします……」
 ドアが閉まる。みんなの顔が窓の向こうに流れて行く。
 窓の外のネオンサインがにじむ。
 仲間がくれたお守りを握り締める。
 俺が忘れていたものを、最後の最後に思い出させてくれた。
 頬を伝う雫が床に落ちる。
 そして俺はそのままデッキに立ち、列車の揺れに身を任せていた……




   あとがき
 ここは自分の机ではない。ついでに代筆でもある。
 今回は原案者の修学旅行の宿舎「宮古国民休暇村」にて原案者代筆で書いている。
 したがって字も汚く本当にすまない。(わるかったね!)
 とにもかくにも原案者は寝ていなく、今ごろは目が真っ赤であろう。(そのとおりっ!)
 また、よくわからないストーリーだが(あるのかよ)原案者が原案者なので(どーゆー意味だ、おい!)許していただきたい。
 ということで、またいつか、パートナー(俺だよ)共々よろしくお願いいたします。
                                      夢旅人 池馬 白栂

   HPあとがき
 これはあとがきにも書いているとおり、私の高校の修学旅行中に書いている作品です。
 代筆というよりは原案をパートナーが、その他を私がといったほうが正確なのかも知れません。
 別にだからなんだってわけじゃないですけれどね。でも、この作品で「旅行中に作品を書く」というのがくせになった気がします。
 おかげで旅行に行く時は原案を書留めるためのノートかルースリーフを必ず持っていくことになってしまいました。
 なんだかなぁ……
 作品については、特にこれといって特徴の無いものかもしれませんね。
 決してこの手の作品は嫌いじゃないですけれど、そう簡単に田舎へ帰る人が多いとも思えないですし、この主人公には、帰っても仕事がある訳ですから。
 とはいうものの、この時期はこんなプロットばかりでては『面白くない』といって消えていた時期でした。
 この後から少しずつ忙しくなり、創作に集中できない日々か始まることになります。


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