北海道旅行記2008
3日目 札幌〜積丹〜北竜
2008.9
目が覚めて一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
すぐに旅先であることを思い出す。
シャワーをざっと浴びて目を覚まし朝食へ向かう。
朝食はビュッフェ方式である。
ビジネスホテルの定番だが、少し変わっているのは、地元食材多めなのと、ヤクルトが置いてあるところだろうか。
しっかりと食べて、部屋に向かう。
送った荷物と持ってきた荷物をあわせるとかなりの量になるが、これも隣のレンタカー会社までである。
予約時間には少々遅れる旨を連絡しておいたのだが、かなりの賑わいでそんな些細な事には触れられもしなかった。
今回の旅のお供もレガシィのワゴンである。
ただし今回の車はくすんだグレーで、車内も綺麗とは言い難かった。
オートマのギアの入りも悪い。
今回の相棒は少し苦労させられるかもしれない。
レンタカー会社の人は忙しいのか車外の目視点検も無く、慌ただしい出発となった。
札幌の市外を抜け、一路高速で小樽方面へ。
今日向かうのは積丹である。
スピードと逸る気持ちを抑えて車を西に向ける。
高速は小樽までである。
昨日来た小樽運河の脇を抜け、国道を行く。
昨日よりは天気は良くないものの、今日も暑いくらい晴れている。
函館へと向かう道は車が多く、ペースはそれほどあがらない。
余市からは国道と別れ、海岸沿いを行く道道となった。
この道は改良されたトンネルが多く、山と海に囲まれた集落を繋ぐようにして進んで行く。
ただしトンネル以外はまだ改良中で、トンネルのほうが走り易い事が多い。
札幌からほぼ止まらずに走り、今日最初の観光スポット「ピアノ岬観光船のりば」に着いた。
タイミングが悪く、少し前に船は出てしまったらしい。
次の出港は30分後。
お昼にもう少しといった時間だったが、食事をしていると乗り逃す微妙な時間である。
ここはのんびりと待つことにした。
近くで地元の人が網焼きの準備をしている。
お昼の用意なのだろう。
その側に茶色い毛をした鳥がうろついている。
地元の方に聞くとまだ幼鳥だという。
なんの幼鳥かと尋ねようとした所で、その幼鳥が干した網に絡まってぎゃあぎゃあと大騒ぎになってしまった。
結局その時は聞けなかったのだが、後で鴎の群れに同じ姿を多く見た。
その時初めて鴎の幼鳥が茶色い毛をしていることを知った。
しばらくして観光船が港へと戻って来た。
中からは10人程のお客さんが降りてくる。
船内の点検を終えたところで船内へと案内された。

あと10分ほどで出港なのだが、お客さんは私以外に2人しかいない。
先に船内に入り、階段を降りてみる。
この船は船底に窓があり、海底の様子を見ることが出来るように作られている。
窓の外には何かの魚の群れが悠々と泳いでいた。
出港するので上にどうぞ、と声をかけられる。
結局お客さんは増える事なく出港した。
港を出ると、なかなか揺れる。
艫先に立てば飛沫が顔にかかる。
今日の気温ではそれも気持ち良い。
切り立った崖がゴリラの顔のように見えたり、陸地からでは行けない海岸を紹介したりとガイド役の男性の声と共に船は進む。
しばらくして島と崖との間位に船が来ると、船内へと案内された。
このあたりは浅いのか、まわりが緑色に光っている。
小さな魚の群れの脇を通過すると、海底に黒く丸いものが沢山見えて来た。
ウニだ。
かなりあるのが見える。
魚礁として沈められたコンクリートの上にも沢山見える。
素人でも取れそうだが、そういう訳でもないのだろう。
しばらく船は旋回を続け海底の様子を見せてくれていた。

再び甲板にあがり、船は港に戻り始めた。
港に戻る途中、ガイド役の男性がパンの耳を用意し始めた。
これを鴎達に投げてよいとの事。
投げ始めた途端、先程まで岩の上で休んでいた鴎達が一斉に飛び立った。
船の周りがいきなり賑やかになる。
このパンはサービスなのだが、ちゃっかりとパンの耳に関して募金を呼び掛ける貯金箱が置いてある。
この人数では採算も取れていないだろう、と少しだけ募金した。
鴎が船の周りを乱舞する。
パンの耳を蒔くたびに鴎達はそれを追ってターンや急降下を繰り返している。
カメラを構えつつ投げるのは難しく、諦めて投げる事だけに集中した。
パンを投げるのは子供の頃に戻ったようでなかなか楽しい。
投げる人が少ないのか、鴎達はなかなか船から離れようとしない。
結局、投げ終えても10羽程度が港までついてきてしまった。

40分程度の旅を楽しんで再び車に乗り込む。
次に向かったのは積丹岬である。
この町から先では道は海から離れ、丘の上を行くような感じになる。
リアス式海岸の海沿いは険し過ぎて道が通せなかったのだろう。
意外にもこちらのほうが快適な道であり、楽に運転が出来る道であった。
道道から脇道へ逸れ、小高い山に向かって一気に登る。
駐車場に着いたが海は見えない。
海を見るには正面の人用トンネルを抜ける必要があった。
トンネルの向こうは光が強く、何も見えない。
トンネルを抜ける直前、目の前に青が広がる。
そこには絶景と呼べる景色があった。
本当に小さな展望スペースのはるか眼下に青と緑の海が広がっている。
快晴、というほどではないものの、そのコントラストには誰もが目を奪われる。
よく見ると下に向かう階段があり、急な斜面をジグザグに海岸まで降りていけるようである。
実際に何人かは降りていっているようだ。
15分程、景色に見とれていた。
これだけの為にわざわざ積丹まで来た甲斐があったと思わせる十分な景色である。
再び車に戻り今度は神威岬へと移動する。
こちらのほうが有名な観光地であり、駐車場もかなり広い。
平日だからなのか時間が悪いのか、あまり人は多くなかった。
まだ14時半だというのに、すでに夕方の雰囲気が漂い始めている。
笹の葉の向こうに青空が広がり、写真で見たような光景がそこにある。
緩い階段をかなり登って丘の上に出る。
先程よりかなり靄がかかり「絶景!」とはいかないが、それでも雄大な景色が広がる。
海の中に突き出た岩の脇を橋で作られた歩道が見える。
その先は沈むように日本海に沈んでいく。

最後の大きな岩の先にあるのが神威岬灯台である。
本来ならばその灯台まで行けるのだが今は橋が整備中であり、残念ながら岬の突端までは行くことが叶わなかった。
階段を登ってほてった身体を少し強めの風が冷やしてくれる。
まだ風はそれほど冷たくないが、あと1時間もすれば上着が必要になるだろう。
景色を堪能した後はお腹を満たすことにする。
レストハウスは広かったが、お客さんは誰もおらず、営業しているのか疑問な店である。
広い食堂にぽつんとコーヒーを飲んでいる人がいる。
営業しているのを確認してから食券を買った。
秋なので北海道らしい鮭のちゃんちゃん焼き定食を頼む。
予想外に旅館のように小さな鍋が出て来てその場で作る方式で、お腹が減っている私には少々辛かった。
5分ほど待ち、鮭をほぐして食べる。
鮭自体の味はいたって普通の味であった。
さぁ、ここからは一気に来た道を戻る。
積丹岬の入口を通過し、先程船に乗った町を通過し、ひたすら海岸沿いを戻る。
途中、何年か前にトンネルの上の岩盤が崩れ、バス等が埋まった事故現場も通過する。
行きには気がつかなかったが、慰霊碑の看板を見て遠い記憶の中のニュースが蘇った。
心の中で冥福を祈る。
だんだんと時間は夕暮れへ。
そんな中、余市の街に戻って来た。
ここには有名なウィスキー工場がある。
間に合うかどうかわからないが行ってみることにした。
聞いてみると閉館まではあと30分だという。
この機会を逃すといつ来られるかわからない。
とにかく見られる所だけ集中して見る。
蒸留施設などはかなり奥で時間が足りない。
駐車場から程近い博物館をしっかり見ることにした。
歴史に始まり、世界のウィスキーについて。
製造方法と創業者の解説。
小さいながらもしっかりとした作りになっている。
もともと熟成させるための建物だったのか、博物館内にはウィスキーの芳醇な香りが充満している。
急いでの見学となってしまったのは残念な場所であった。
今度はしっかりと時間をとって来ようと思う。
車に戻りこれからの予定を考える。
最終目的地は釧路だが、行きたいところは北にある。
まずは北へ進路を取ることにした。
余市から夕闇迫る小樽を通過し、高速で札幌の脇を掠める。
白石から旭川方面へと分岐し、進路を北寄りに変えた。
かなりの長丁場になり、段々と疲れが出て来る。
このままだと食事を食べそこねる可能性も出てくる。
そこで確実に営業してるであろう上砂川SAに入ることにした。
文章で書けばあっという間の行程だが実際は結構な時間がかかっている。
この上砂川SAにはハイウェイオアシスという別の施設が併設されている。
しかし当然この時間は営業が終了していた。
素直にSA内の食事処に入る。
このSAにはレストランはなく、スナックコーナーを拡大したような形である。
少し迷ってからスープカレーの食券を買った。
こういう場所なのでそれほど期待はしていなかったのだが、具だくさんでとても美味しかった。
じゃがいもがゴロリと1つ丸ごと入っているのなどはじゃがいも好きの私としては非常に嬉しい。
辛み成分で身体が少しあったまったところで車に戻った。
後は風呂と寝床を探すだけである。
今夜は車中泊のつもりなのだが、さすがに風呂には入りたい。
目指す場所が北というのもあるが、あまり北に行くと、風呂の営業時間が終わってしまう。
ナビで調べ、少しコースを外れるが「道の駅北竜」に向かうことにした。
高速で深川JCTから留萌方面へ。
無料通行区間を通過して高速から一般道に入る。
さすがにこの時間では車は少ない。
スピードに気をつけながら道の駅を目指した。
「道の駅北竜」には結構多くの車が止まっていた。
地元の温泉施設として結構賑わっているようだ。
タオルなどを持ち早速中へ入る。
ロビーから待合場所などはなかなか綺麗にしている。
貴重品ロッカーも目立つところにあるので安心できる。
細かいところは少々くたびれ始めていたものの、清潔さの感じられる施設である。
お湯はしっとりとした感じで、露天風呂も作られている。
地元の人の会話を聞き流しながら湯に浸かる。
風が少し強くなってきていた。
雲で星は見えなくなっており明日の天気が少し心配になる……が、その時はその時だ。
1時間程のんびりとし、湯上がり処で休む。
今日の宿泊地をどうしようか悩む。
すでに時間は21時半になり、これから走る気にはなれない。
そう考えると、もうここで泊まる気になってきた。
ただし一つだけ確かめることがある。
外に出て荷物を置くと、24時間使えるトイレに入った。
美しい、とまでは行かないが汚くはない。
虫は多いがこういう場所では諦めるしかない。
という個人的な判断により、このトイレは及第点であった。
正直、汚いトイレは利用したくない。
車中泊では私はトイレを重視して泊まるか泊まらないかを決めていた。
そうと決めればあとは寝る準備である。
車を暗い場所に移動し、後ろの座席を倒して広いフラットなスペースを作る。
あとは他の荷物を前の席へ移動させ、寝袋に入り込むだけである。
狭い車内でジャージに着替え、枕がわりのセーターをひいて眠りについた。
時間はまだ22時も達さない宵の口だが、暗くなれば寝る。
これが野営の鉄則である。
明日は早く起きられるだろうか……