北海道旅行記2008  
6日目 忠類〜広尾〜襟裳〜十勝川温泉
2008.9


朝が来た!
車には窓の外からの明かりを遮るものがない。
となれば当然、朝が来れば自分の周りも明るくなる。
身体を起こす。
ぼーっとした状態でまずはトイレ。
早朝のもう一枚 トイレを出ると少ししゃきっとする。
まだ太陽は出ていないが雲の隙間が赤く染まっていた。
カメラを取り出して朝露に濡れたジャングルジムを登る。
何枚かシャッターを切り、再び眠りについた。


それから2時間ほどがたっただろうか。
本格的に目覚めたのは7時半を過ぎた。
すでに周りにいた野営の車達も半分ほどに減っている。
今朝はもう少し早く行動を開始する予定だったのだが……
まずは車の中を片付けて運転できる状態に戻す。
そのあとでセルコマートで朝食を買い、戻って食事をした。
今日の予定は襟裳岬の見学だ。
しかしこのまますぐに襟裳岬に向かうのも面白みがない。
道の駅の観光マップを見ると、それほど遠くない所にダムが壊れてできた滝があるらしい。
興味をそそられて今日の観光一発目をそこに決めた。


ピョウタンって???
道の駅から30分ほどだろうか。
決壊したダムが作ったと言われる滝のある場所に到着した。
「ピョウタンの滝」という名前がついている。
決壊、というほどに壊れた様子はない。
ただ奇妙なのは、砂防ダムほどの大きさのダムの真ん中に大きな自然岩が出っぱっている。
まるでダム自体が岩を抱き込むようにして作られているのだ。
解説によると、このダムは昭和30年代中頃に地元の住民がお金を出し合って作った発電用ダムらしい。
しかし発電開始からたった1年で土石流によって決壊してしまったらしい。
決壊、とはいうものの見た目には大して壊れている様には見えない。
しかし、発電が出来なくなったのは間違いないのだろう。
その時の地元の人の落胆はいかほどだったのだろうか。
なんとも言えない気分でダムを見つめていた。

チーズ作り中 ダムからの帰り道、走っているとキタキツネを見かけた。
走行中でありあっというまに通り過ぎてしまったので写真を撮ることは叶わなかった。
今回の旅ではキタキツネを見かけたのはこの1度だけであった。
そのあと向かったのは最近テレビで話題の花畑牧場である。
まだ朝も早めで何の気無しに立ち寄ってみたのだが、すでに売店に入るためにかなりの人が列を作っていた。
駐車場は混み合い観光バスも2台到着しており、さらに次々と車が到着してくる。
予想以上の大盛況である。
親からキャラメルを所望されていたのだが、列に並んで売店に入るまで1時間近くかかりそうな勢いある。
さすがにそんな無駄な時間は使いたくない。
列に並ぶのを諦め、大きくない施設を見学するだけにした。
チーズ工房ではなにやら丸いチーズを作っている。
カッチョカバロというチーズらしくなかなか面白い形である。
また動物ふれあいコーナーにはほとんど人がいなく、有料と書いてある。
脇には「入場には売店内でお金を払う」ようなことが書いてあったのだが、あの混雑では実質無理であろう。
すでに子供たちが自由に出入りしており、職員もそれを止める雰囲気もない。
10分程の見学を終え、花畑牧場を後にした。


今はただのバス停 あとはひたすら南下である。
目指すは襟裳岬。
かなり長い距離になる。
道道から国道へ、あとはその国道を南へ走る。
海沿いに出るのは広尾の町の手前である。
ただ海は国道から離れているのでなかなか望む事は出来ない。
はっぴを着た子供たちが珍しく歩道を歩いている。 今日は広尾の町はお祭りがあるようだ。 町のあちこちに警官も多く立っている。

広尾は昔からの港町であり周辺の町に比べ大きい。
レールがここまで延びていただけのことはある。
せっかくなのでその終点であった広尾駅の駅舎を見に行くことにしよう。
広尾駅へ続く道は広く、真っすぐに駅へと延びている。
昔は駅を中心に町があったことを語る道である。
駅はバスターミナル兼史料館になっていた。
懐かしい改札 北海道にはこのような廃線駅舎を史料館としているところが多い。
ただ作ったのはいいが、その後の管理が行き届いていない場所も多いのは残念である。
広尾駅の史料も一部のランプが切れていたり、解説パネルが指でこすられたのか、一部見えなくなったりしていた。
これでもまだマシなほうだとは思うのだが。
改札員の立つ銀色の囲いが懐かしい。
今では自動改札ばかりになり、ほとんど見かけなくなったものである。
改札を抜けてホームに出た。
残念ながらその先は埋め立てられ、ホームの高さとあまり変わらないような駐車場になっていた。
線路が延びていたであろう方向は公園になっていて、近所の方だろうか、のんびりと犬を散歩させている。
これだけ車社会が発達すると、鉄道は昔の人の郷愁の中だけの存在なのかもしれない。


崖の途中から?
寂しくなってしまった広尾駅を後に再び南下をする。
広尾の町が終わり、しばらく進むと道は海沿いへと躍り出る。
そこで珍しい光景に出会った。
道の脇の崖から水が湧きだしまるで滝のようになっているのだ。
「フンベの滝」というらしい。
駐車帯のようなスペースへ車を寄せ、少し戻って滝を眺めた。
道路のすぐ脇に白糸の滝のように崖から湧き出す水がある。
その下は小さな池になっており、流れ出した水は道路の下を潜り海に注いでいた。
水は冷たかった また、少し離れた別の場所ではしっかりとした筋になって水が落ちてくるぐらい勢いもある。
なんとも不思議な光景だ。
水は冷たく、おそらくは涌き水なのだろう。
面白い光景に何回かシャッターを切った。
晴れていればなかなか美しい写真が撮れそうだったが、生憎今日は厚い雲に太陽は隠されていた。
それでも素敵な光景に出会えたことに感謝しよう。

ここから先の道は、崖と海の間に無理矢理通した感じであった。
黄金道路と呼ばれている区間である。
この「黄金」という名前は金が採れるからという意味ではなく「それほどお金がかかった」という意味だと聞いたことがある。
確かに断崖の下を削り落石防止のトンネルもどきを大量に作っているこの道は、相当な金額がかかっていることは想像がつく。
今はさらに落石避けでは間に合わない部分、一気に新しいトンネルで抜けるように道を作っている。
この道はいつまでも「黄金道路」であり続けそうであった。
どんよりとした雲と海を左に見つつ、車は南へと進む。
南ほど天気が悪いのか、雲がだんだんと厚くなっている気がする。
襟裳岬の手前で左折し、岬へと続く道に入った。
この辺りはあまり高い木は生えていない。
天気とあいまって殺伐とした雰囲気を醸し出している。
海岸沿いまで降りていた道がグイッと高さをあげると、そこが駐車場の入口であった。


海に消える山脈の端 憧れの襟裳岬。
さすがに観光地だけあって車やバイクが多く止まっていた。
車の外に出てみると以外にも寒い。
風もかなり強く吹いている。
一枚上着を羽織ってから展望台へと進んだ。
遊歩道は綺麗過ぎるほど整備されており、最果ての地の印象はない。
この道の下に襟裳岬の博物館のようなものが作られている影響もあるのであろう。
灯台近くの展望台に立つと、ゴツゴツとした岩山が海に潜るかのように消えていた。
襟裳岬は日高山脈が海に沈む場所ともいえ、振り返ればじわじわと高さを増していく山々が連なる。
残念ながら天気が悪く、そう遠くまでは見えなかったが。
しばらくは海を見つめていたが、名物とも言える強い風に追われるように駐車場へと戻ることにした。
風を避けるため、地下にある博物館への入口を使う。
螺旋階段で地下へ降り、あとはゆっくりとトンネルを抜けて駐車場に戻る。
2300円ぐらいした?
すでに14時。
お腹も減っている。
今走ってきた黄金道路には何か食べられそうな店は無かった。
となればここで食べていくしかない。
並んでいるお土産屋の一軒に入り、その奥にある食堂のテーブルについた。
かなりの観光地価格ではあったが、ここまでたいして食べていなかったせいか海鮮丼に惹かれて注文する。
まったく期待はしていなかった割には、ご飯自体も載っているネタもなかなか美味しかった。
温かいお茶で少し落ち着いてから店を出る。


今日の目的は達した。
さぁ、後は今来た道をひたすら戻る。
明日には釧路へ向かうことも考え、今日は帯広辺りに泊まるつもりである。
再び黄金道路を戻る。
先程は気がつかなかったが、新しいトンネルの脇には役目を終えた旧道がちらほら見える。
旧道が気になるのは最近見ている某サイトのせいかもしれない。
海岸ぎりぎりに見える古いトンネルの断面はびっくりするほど小さいものばかりであった。
再び戻った広尾の町のお祭りは終わりつつあるようで、参加していた人達が家に戻っていくのが見える。
広尾の町中だけ広かった道は、通り過ぎれば元通りとなりひたすら十勝の大地を貫く。
道路の脇には廃線後を示すかのように防風林が並び、寄り添うかのように道路が走る。
交通の手段は変わっても町々を結ぶ線は昔から変わっていないことがわかる。

ちょっと食べちゃった 信号で地図を覗いていると何やら気になる店を見つけた。
この道からほんの少し脇道に入ったところである。
地元のミルクを使ったデザートの店である。
注意深く道を見ていると、それなりの大きさの看板が立っていた。
先程お昼を食べたばかりの気もするが、甘いものは余裕で入る。
建物の外にピザとソフトクリームを売る店があったが、少し肌寒いのこんな日は中のカフェで暖まるに限る。
カフェオレとチーズケーキを頼み一休み。
今日は運転ばかりで少し疲れたらしい。
甘くまろやかなケーキとお茶をしているうちに、瞼が重くなってきた。
とはいえ、店で寝るわけにはいかない。
車に戻って10分程度目を閉じた。
これだけでも身体はかなり楽になる。
元気が戻った所で車をスタートさせた。

寄り道のせいで時間は16時を回りつつある。
今日の残り時間もわずかである。
この時ふと花畑牧場のことを思い出した。
もしかしたらこの時間なら空いているかもしれない。
カーナビをセットしなおし花畑牧場へと舞い戻る。
到着してみると、朝よりは少ないもののまだ人の列は残っていた。
しかし待てない長さではない。
15分ほどで売店の中へ入る。
一部の商品は売切れであったが、とりあえず頼まれた生キャラメルを購入。
さらに心惹かれたプリンを買った。
キャラメルの方は親に発送するため送付伝票とともにレジに出す。
すると「届くまで最長2週間程度かかるが良いか」とのこと。
そんなにかかるのか!?と思いつつ、自分のものではないので気にはならない。
本当にブームだということがよくわかる店である。
このブームはいつまでの続くのだろうか……

試しに食べてみるためのキャラメル一箱とプリンを持って車に戻る。
特にプリンはすぐに食べるつもりで買ったのだが、ここで食べるのは何か気が乗らない。
どこか良いところが無いか、とカーナビで調べてみると、それほど遠くない場所に展望台があるらしい。
そこならば気持ち良く食べられるのでは無いかと車を走らせる。
花畑牧場から5分。
目の前に小高い山が見えて来た。
カーナビはその頂上を目指している。
しかしどう考えてもカーナビ通りに走ったのではたどり着けそうもない。
注意深く周りを見ると展望台への案内板が出ていた。
その看板に従って車を進めていったのだが……
どんどんと道は細くなり、舗装も無くなった。
道は牧草地の脇を掠め、木々が生い茂った山の中へと入っていき、最後は木々の間の少し広くなった場所で行き止まっていた。
その先は、木々の間を一気に昇る階段が見える。
しかしそれにしても何か不気味な雰囲気がある。
私以外に誰もいないし、裏の山々へと続いている森からは何が現れてもおかしくない雰囲気が漂っていた。
ここでプリンを食べることは止めた。


即効で離脱
ただしせっかく来たのだから展望台へは行ってみよう。
夕暮れ迫る急な階段を昇り山のてっぺんを目指す。
辺りの雰囲気のせいか、どうしても早足になってしまう。
息をきらせて階段を昇り、視界の開ける所に来た。
晴れていれば綺麗であろう景色がそこにはあったが、いかんせん気持ちに余裕がない。
気もそぞろに真後ろに見えた展望台へと進んだ。
展望台は立派である。
木組みの塔で回るようにして階段が作られている。
高さは4、5階分くらいはあり、かなり高い。
雲が多いからこそ ただしここを訪れる人が少ないのか、微妙に痛んでいるところもある。
天気は先程より回復しつつあるが、まだ雲が多い。
それもあって、視界がそれなりに開ける高さまで昇り、てっぺんまでは上がらずに降りて来た。
そのあとも急ぎ足で車に戻る。

車に戻ったものの、いまいち落ち着かない。
もう少し視界の開けた所でプリンを食べることにした。
鬱蒼とした林を抜け、牧場の脇を進む。
目的地も決めずにふらふらと走った。
何色、というのか 空をみると北の空は雲が切れ青空が見えている。
もう少し早く晴れれば良かったのに、と思いふと視線を脇に振った。
青黒い山の影の向こうに紅い空が輝いていた。
素晴らしい夕日では無いが、それは十分に見つめるだけの価値はあった。
視界が良く適度に道が広くなった所で車を止める。
カメラを取り出し、車外へ。
刻一刻と色を変えていく空にレンズを向ける。
太陽は山の影となり、上空の雲を朱く染めていく。
ぐんぐんと周りは色を失い、カメラに収められなくなって車に戻った。
そして最後の名残を見つめつつプリンを食べることとなった。
濃厚な味は疲れた身体にはなかなか良い栄養補給である。
小さな瓶のタマゴ色はすぐにお腹の中へと消えてしまった。
日高の向こうに太陽は消えた 一日曇り空だった最後に空がお詫びの夕焼けをくれたような、そんな気分であった。


今日は宿に泊まる。
実は花畑牧場の手前で宿に予約の電話をいれていた。
宿は昨日立ち寄り入浴をした「かんぽの宿十勝川」である。
宿の人の対応が良かったので泊まってみたくなったのだ。
帯広で今回2回目の給油をし、宿に向かう。
日没を見てから宿に向かったので時間はかなり遅くなっていた。
食事の時間を遅目にしてもらい、まずは部屋に荷物を置いて早速風呂に向かう。
うん、やはりこの温泉は良い。
ちょうど食事時間にあたるのか、風呂のお客さんも少ない。
お陰でのびのびと入ることができた。
のびのびし過ぎて露天風呂で眠ってしまったのはやり過ぎだったが。
因みにサウナもある。
珍しいのは露天風呂の脇にログハウスがたっていて、そこがサウナになっていることだろうか。
後付けで無理に狭いサウナを中に設けるよりはずっと合理的である。

食べきれないほどの夕食 気がつけば1時間ほど経っており、食事の時間が近づいていた。
一度部屋に戻り、丹前を持って食堂に向かう。
一部の料理はテーブルに並んでいたが、他の宿に比べるとかなり少ない。
?と思っていると、係の方がやってきておもむろに料理の説明を始めた。
どの料理もなかなか考えられている。
まず感心したのは釜炊きのご飯である。
食事時間に合わせて先に火を入れておいて、来てすぐに食べることが出来るようにしてあった。
そして次々と現れる温かい料理。
御品書きにもあったのだが、次々に来る料理に圧倒され見ながら食べる事を忘れた。
4名席を案内されていたのだが、一人分の皿でかなりのスペースを埋めてしまう。
空室上1ランク上のプランではあったが、こんなに料理が出るとは思っていなかった。
一体何品出たのかわからないが、食べ終った時にはしばらく動けないほどであった。

十分過ぎるほどの食事をし、風呂にも入り、あとは部屋に戻ってのんびりと荷物整理を行う。
部屋も異常に広く、荷物も広げたい放題だ。
ここまで旅をして雑然とした荷物を整理し直す。
あとはテレビを見てベッドに潜り込んだ。
余程疲れていたのか、ベッドに入ってから寝るまではの記憶は一切ない……



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